介護施設のリネンを外部に委託しようとしたとき、最初につまずくのが「自施設のリネンは、どこまで特別な扱いが必要なのか」という問いです。
病院なら答えははっきりしています。クリーニング業法施行規則が、病院・診療所で療養のために使用された寝具を名指しで挙げているためです。ところが介護施設は、この条文に登場しません。だから判断が宙に浮きます。
けれども、条文をよく読むと別の答えが見えてきます。施設の種別ではなく、品目そのもので指定される項目があるのです。ここを押さえると、委託先に何を求めるべきかが一気に具体化します。
この記事では、指定洗濯物の判定を出発点に、交換頻度の設計、必要枚数の逆算、業者選定で確認する8項目までを、施設のご担当者が判断できる形で整理しました。
なお、すべての施設で外部委託が最適とは限りません。入居者数が少なく、洗濯設備も職員体制も整っている施設では、内製のほうが合理的なこともあります。私たちは業務用クリーニングを本業としていますが、ご相談の内容によっては「現状の運用を続けるほうがよい」とお伝えする場合もあります。
最初に確認する「指定洗濯物に該当するか」

クリーニング業法施行規則が定める5つの区分
クリーニング業法第3条第3項第5号は、「伝染性の疾病の病原体による汚染のおそれのあるものとして厚生労働省令で指定する洗濯物」について、他の洗濯物と区分して保管し、洗濯前に消毒することを営業者に求めています。ただし、洗濯そのものが消毒の効果を持つ方法で行われる場合は、この限りではありません。
その「厚生労働省令で指定する洗濯物」を定めているのが、クリーニング業法施行規則第1条です。営業者に引き渡される前に消毒されていないもので、次の5つが該当します。
| 号 | 対象 |
|---|---|
| 一 | 伝染性の疾病にかかっている者が使用した物として引き渡されたもの |
| 二 | 伝染性の疾病にかかっている者に接した者が使用した物で、伝染性の疾病の病原体による汚染のおそれのあるものとして引き渡されたもの |
| 三 | おむつ、パンツその他これらに類するもの |
| 四 | 手ぬぐい、タオルその他これらに類するもの |
| 五 | 病院又は診療所において療養のために使用された寝具その他これに類するもの |
介護施設で見落とされる論点
第五号には「病院又は診療所」と書かれており、介護施設は含まれていません。このため「自施設は対象外だ」と整理してしまうケースが見受けられます。
ところが、第三号と第四号には施設の種別が書かれていません。おむつ、パンツ、手ぬぐい、タオル。これらは、どの施設で使われたかを問わず該当します。
つまり、多くの介護施設では次のような整理になります。
| リネンの種類 | 指定洗濯物への該当 |
|---|---|
| おむつ、リハビリパンツ、布パンツ | 該当(第三号) |
| タオル、フェイスタオル、おしぼり | 該当(第四号) |
| シーツ、包布、枕カバー | 原則として非該当。ただし第一号・第二号に当たる場合は該当 |
| 入居者の私物衣類 | 原則として非該当。ただし第一号・第二号に当たる場合は該当 |
| 職員のユニフォーム | 原則として非該当 |
タオル類が該当するという点は、実務上とても重要です。介護施設では清拭用のタオルを大量に使います——つまり、量の多い品目がそのまま指定洗濯物にあたる。この品目を扱える設備を持つ事業者かどうかが、委託先を絞る最初の条件になるわけです。
なお、感染症の発生時には第一号・第二号が働きます。感染性胃腸炎やインフルエンザの流行期には、平時は非該当だったシーツ類も指定洗濯物として扱う必要が出てきます。平時と有事で扱いが切り替わる——この設計を最初に決めておくのが実務のコツです。切り替えの判断を誰が出すのかまで含めて、決めておきたいところでしょう。
該当した場合、委託先に何が求められるか
指定洗濯物を扱うクリーニング所には、区分保管と消毒工程が求められます。厚生労働省の「クリーニング所における衛生管理要領」は、消毒の方法として熱湯による方法、塩素剤による方法、界面活性剤による方法を示し、それぞれに温度・濃度・時間の条件を定めています。
さらに、し尿の付着した洗濯物を扱う場合には、洗濯前の処理場所または設備と、その排水の浄化設備が要件に加わります——おむつを扱うかどうかで、対応できる事業者が大きく絞られる理由はここにあります。
委託先の候補には、初回の問い合わせで次の2点を確認してください。
- 指定洗濯物の取り扱いに対応しているか
- おむつなど、し尿の付着した洗濯物を受け入れられるか
この2点で候補が絞れれば、そのあとの比較はぐっと楽になります。
外部委託が合わない3つのケース

ケース1:入居者数が少なく、既に設備がある
小規模多機能型やグループホームのように、入居定員が10〜20名程度で、業務用洗濯機を保有し、職員のシフトにも余裕がある施設では、外部委託の費用対効果が出にくくなります。
最低利用金額に届かず、単価換算で割高になるケースが典型です。この場合は、おむつやタオルなど指定洗濯物に該当する品目だけを部分委託する形が現実的でしょう。全量委託か内製かの二択で考える必要はありません。
ケース2:私物衣類の個別管理を求めている
入居者の私物衣類は、取り違えが起きると信頼に直結します。個体管理の仕組みを持たない事業者に委託すると、この部分でトラブルが生じます。
個体管理には、名前タグの縫い付けからバーコード、RFIDまで段階があります。導入費用と、職員が仕分けにかけている時間を比べて判断してください。私物衣類だけ内製に残すという切り分けも、選択肢のひとつです。
ケース3:集配ルートから外れている
指定洗濯物に対応できる設備を持つ事業者は、そもそも数が限られます。そのうえで集配可能な範囲となると、地域によっては選択肢が1〜2社になることもあります。
1社しか候補がない状態での契約は、条件交渉の余地が狭くなります。隣接する市区町村まで範囲を広げて探す、あるいは複数の工場と提携する仲介型の事業者に相談する、といった手が有効です。
交換頻度をどう設計するか

定期交換と随時交換の二層構造にする
介護施設のリネン交換は、「週◯回」という一律の設定だけでは回りません。実際には次の二層で考えると設計しやすくなります。
| 層 | 対象 | 頻度の考え方 |
|---|---|---|
| 定期交換 | シーツ、包布、枕カバー、ベッドパッド | 週1〜2回を基本とし、入居者の状態で調整 |
| 随時交換 | 汚染時のシーツ類、おむつ、タオル | 発生の都度。回収動線と保管場所を先に決める |
定期交換の頻度に、法令上の一律の基準はありません。施設の運営基準や感染対策指針のなかで、自施設の方針として定めることになります。
その際の判断材料は3つです。
- 入居者の状態:排泄の自立度、発汗の程度、皮膚の状態
- 職員の作業時間:1回の交換にかかる時間 × 対象床数
- リネンの保有枚数:手元の在庫で何回転できるか
この3つのうち、最も見落とされるのが2番目です。週2回から週3回に増やす判断は、リネン費用だけを押し上げるわけではありません。職員の作業時間も同じだけ増える——委託を検討する動機の多くは、実はここにあります。
感染症発生時の切り分けを先に決めておく
感染性胃腸炎やインフルエンザが発生した際、リネンの扱いは平時と変わります。厚生労働省が公開する消毒・滅菌の手引きでは、病原体に応じた消毒方法が整理されています。
契約前に、委託先と次の点を確認しておくと、有事に慌てずに済みます。
- 感染症発生時、汚染リネンをどう分けて出すか(袋の色分け、表示の方法)
- 事業者側は、そのリネンをどう処理するか
- 追加料金は発生するか。発生する場合の単価
- 施設内での消毒が必要な範囲はどこまでか
「そのときになったら相談する」では、実際に発生した現場が動けません。手順書に落とし込んでおく価値があります。
必要枚数の逆算と、リネン庫の設計

逆算式
必要枚数 = 1回の交換で使う枚数 × 回転数 + 随時交換用の予備
回転数は「使用中・洗濯中および輸送中・在庫」の循環に必要な倍率です。委託先の集配頻度で変わります。
| 集配頻度 | 目安となる回転数 |
|---|---|
| 週1回 | 3.5〜4.0 |
| 週2回 | 3.0前後 |
| 週3回以上 | 2.5〜3.0 |
たとえば50床の施設で、1床あたりシーツ1枚・包布1枚・枕カバー1枚を週2回交換する場合。1回の交換で使う枚数は各50枚、週2回なので週100枚。週2回集配(回転数3.0)なら、各150枚が最低ラインになります。
ここに随時交換用の予備を足します。汚染による交換がどの程度発生するかは施設ごとに差が大きいため、直近3か月の実績を数えておくのが確実です。実績がない場合は、定期交換分の20〜30%を目安に置いて、運用しながら調整してください。
リネン庫は「動線」で設計する
枚数が決まったら、置き場所です。ここで最も重要なのが、清潔なリネンと使用済みリネンの動線を交差させないことです。
厚生労働省の衛生管理要領でも、未洗濯物と洗濯済み物を区分して取り扱う考え方が示されています。施設側でも同じ原則を適用します。
- 清潔リネンの保管棚と、使用済みリネンの一時保管場所を物理的に分ける
- 使用済みリネンの回収ワゴンは、清潔リネンの棚の前を通らない経路にする
- おむつ・汚染リネンは、他と混ざらない専用の容器に入れる
- 回収までの一時保管場所は、換気できる場所に設ける
新設や改修のタイミングであれば、この動線を図面の段階で織り込んでおくと、後から苦労しません。既存施設では、ワゴンの運行ルールを決めるだけでもかなり改善します。
業者選定で確認する8項目

候補が絞れたら、次の8項目を同じ書面で各社に投げてください。
| # | 確認事項 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1 | 指定洗濯物の取扱可否 | おむつ・タオル類に対応できるか |
| 2 | し尿付着物の受入可否 | 前処理設備と排水処理の体制 |
| 3 | 集配の回数・曜日・時間帯 | 施設の業務の流れに合うか。追加便の料金 |
| 4 | 私物衣類の個体管理 | 方式(タグ/バーコード/RFID)と、取り違え時の対応 |
| 5 | 感染症発生時の対応 | 分別方法、追加料金、対応可能な範囲 |
| 6 | 最低利用金額・枚数 | 入居率が下がった月の請求額 |
| 7 | 紛失・汚損時の扱い | 弁償単価、免責枚数 |
| 8 | 担当工場と代替拠点 | 工場の所在地。被災・故障時の代替手段 |
このうち4番目の私物衣類は、他業種の施設にはない介護特有の論点です。事業者によっては私物を受けていない場合もあるため、必要なら最初に確認してください。
そして6番目の最低利用金額は、入居率の変動が読みにくい施設ほど重要になります。「稼働が8割に落ちた月、請求はいくらになりますか」と具体的な数字で聞くのが確実です。
職員の作業負担をどこまで移せるか

委託を検討する動機は、費用削減だけではありません。むしろ、職員の作業時間をケアに戻したいという理由のほうが多いのではないでしょうか。
その観点で、どこまで移せるかを整理します。
| 作業 | 委託で消えるか |
|---|---|
| 洗濯・乾燥・たたみ | 消える |
| 在庫の補充発注 | 事業者が管理する契約なら消える |
| 私物衣類の仕分け | 個体管理の仕組み次第。部分的に残る |
| ベッドでの交換作業 | 残る(介護業務そのもの) |
| 汚染リネンの一次処理 | 契約により分かれる |
| リネン庫の整理 | 納品形態により軽減される |
ベッドでの交換作業は、委託しても残ります。ここを誤解したまま導入すると、期待した効果が得られません。委託で消えるのは、あくまで「洗濯と在庫管理にまつわる周辺作業」——ケアそのものは手元に残ります。
とはいえ、その周辺作業は積み上がると相当な時間になります。1日1時間の洗濯・たたみ・補充作業でも、年間では約365時間。この時間をどう評価するかが、費用対効果の議論の中心になります。
よくある質問
Q. 介護施設のリネンは指定洗濯物に該当しますか。
A. 品目によります。クリーニング業法施行規則第1条は、おむつ・パンツ類(第三号)と、手ぬぐい・タオル類(第四号)を施設の種別を問わず対象としています。シーツ類は原則として非該当ですが、感染症にかかっている方が使用した場合などは該当します。
Q. 病院と介護施設で、リネンの扱いは違いますか。
A. 施行規則第五号は「病院又は診療所において療養のために使用された寝具」を対象としており、介護施設は含まれていません。ただし第三号・第四号は施設種別を問わないため、おむつとタオルについては同じ扱いになります。
Q. リネン交換の頻度に法令上の基準はありますか。
A. 一律の基準は定められていません。入居者の状態、職員の体制、保有枚数を踏まえて、施設の方針として定めることになります。週1〜2回の定期交換に、汚染時の随時交換を組み合わせる形が広く見られます。
Q. おむつも委託できますか。
A. 対応する事業者は存在しますが、し尿の付着した洗濯物を扱うには、洗濯前の処理設備と排水の浄化設備が必要とされています。対応可否を最初に確認してください。
Q. 入居者の私物衣類も一緒に頼めますか。
A. 事業者によります。取り違えを防ぐ個体管理の仕組みがあるかどうかが判断の分かれ目です。私物だけ内製に残す施設も少なくありません。
Q. 感染症が発生した場合、どう対応すればよいですか。
A. 平時と分別方法を変え、汚染リネンを他と混ぜずに引き渡す運用に切り替えます。分別の方法、追加料金、対応範囲を契約時に取り決め、手順書に落とし込んでおくことをおすすめします。
Q. 小規模な施設でも受けてもらえますか。
A. 最低利用金額を設けている事業者が多い一方、小ロットに対応する会社もあります。全量委託にこだわらず、指定洗濯物に該当する品目だけを部分委託する形も検討してみてください。
Q. 必要な枚数はどう決めればよいですか。
A. 「1回の交換で使う枚数 × 回転数 + 随時交換用の予備」で算出します。回転数は集配頻度で変わり、週2回なら3.0前後が目安です。予備は直近3か月の汚染交換実績から見積もると精度が上がります。
まとめ:持ち帰っていただきたい5つのこと
- クリーニング業法施行規則第1条の第三号(おむつ・パンツ類)と第四号(手ぬぐい・タオル類)は施設の種別を問わない。介護施設でも指定洗濯物に該当する品目がある
- 第五号は「病院又は診療所」が対象。シーツ類は原則非該当だが、感染症発生時には第一号・第二号が働く
- 交換は定期交換と随時交換の二層で設計する。頻度に法令上の一律基準はない
- 必要枚数は「1回の交換枚数 × 回転数 + 随時交換用の予備」。週2回集配なら回転数3.0前後が目安
- 委託してもベッドでの交換作業は残る。消えるのは洗濯と在庫管理の周辺作業
現在のリネン運用と品目内訳をお知らせいただければ、指定洗濯物の判定と必要枚数の試算をお返しします。部分委託や内製継続が合うと判断した場合は、その理由もお伝えします。
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参考文献
- クリーニング業法(厚生労働省/e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000207 - クリーニング業法施行規則(消毒を要する洗たく物)(厚生労働省/e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50000100035 - クリーニング所における衛生管理要領(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta5158&dataType=1&pageNo=1 - クリーニング所における衛生管理要領(詳細)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000132494.pdf - 感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000911978.pdf - 洗浄・消毒・滅菌(院内感染対策)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001243413.pdf


